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ぱんださんようちえん

大嶋啓之の『ORBITAL MANEUVER phase2:anemotaxis』を聴く。なんだこのヴォーカルは。キレイ系のエレクトロニカにメゾソプラノのウィスパーボイス。正しい。
あからさまに好みなのでヴォーカルの「茶太」で検索した。彼女ったら同人音楽・再生ハイパーべるーヴの『ぱんださんようちえん』(2002)で「嘘ツキ鏡」唄ってたのね。フェイバリットでしたよ。4年ぶりですね、こんにちわ。
茶太は「ちゃた」と読むらしいです。「さた」だったらどうしようと思いました。「シャフト」なら神だったと思います。
というわけで聴き直しましたよぱんださんようちえん

ぱんださんようちえん

そもそもこのアルバム、01・02年第一次アキバ系同人音楽ブームにおいて多数サークルから抜粋したとあるPRCD(いい現象だった)を聴く機会に恵まれ、なかんずく異彩を放つ萌え電波に感銘を受け出先で入手、耐えきれず友人宅でラジカセに放り込むも一周もせぬまに無情な令弟13歳が“■”をプッシュ、小生しょんぼり。小生の五分の魂の二割を占める電波ソング、その二割を否定するとはどういう了見か。
まあそれは許そう。なにせ肝心の内容は大満足。家に帰ってとくと聴きたい。さてさて時節は夏まっさかり。流れる汗も厭わず遊び呆け、あれとあれよという間に件のCDをA氏に貸すことに。まあそれも満足。多くの人に楽しんでいただければ幸い。しかしこれが取り返しのつかぬ行いであった。幾月経どもぱんださんは返ってこない。「そろそろぱんださんと遠足に行きたいのだが?」と催促するも、F氏に又貸ししたとのこと。ふむん。回収を命じ、数日後。


「Fに訊いたんやけど、『オレ知らんで』やって」


(?Д?)ハァ?
いや、お前がFに貸したって言ったんやけどな。そもそも又貸し、というか紛失したらしき状況が、9月に行われた母校の学園祭の部展ブース内だとよ。そりゃカオスだろうさ。
我がものにせんがためにFが痴れ言こいたか生来の鳥頭のせいか(失礼)、はたまた第三者がかっぱらったか、真相は闇へ。てか、おれ、まだきちんと聴いてなかったんだけど。
仕方ないのでリップしてもらったのを手に入れたよ。これはリーガルだろ。おれ、ものほんに金払ったし。
ちなみに2006年現在、「ぱんださんようちえん」はヤフオクで6000円ついてましたよ。


私怨は以上。以下レビュー。

基本はコミックソング。キーワードはもちろん「ぱんださん」。
アニメ声のパンダが5歳児より低脳な「あのね」トークを垂れ流す一曲目。
左から右へ、アニメ声の「にゃーにゃー」がリフレインし続ける二曲目。頭の痛い歌詞とリンクして「にゃーにゃー」声の情感が変遷します。イカす。
出だし二曲で脳髄が叩き起こされます。その後も寸劇やら、作曲者のパンダにまつわるどうでもよいMCをミックスした曲が盛りだくさん。
Tr05「嘘ツキ鏡」(静かなエレクトロニカ?・内気な少女の曲)、Tr06「pink metallic crusaders」(インスト・4ビートのクロスオーヴァー)、Tr11「ウチュウのひと」(ミニマルで幻想的・久石譲系・ひとりがちな少年の、ウチュウのひととの一夏の交流)等のまじめな曲も挟みつつ、ハイライトとなる力作Tr14「blue plastic resistance」(インスト・フュージョン)で疾走、Tr15でチルアウト、lastTr16「猫鍋」(四つ打ち・ハードコア・猫が鍋を囲むお祭りソング)で再び狂的にテンションを上げて大団円。コミックアルバムの域を超えてます。

音楽性は少し広いです。というか意外にもオシャレです。エレクトロニカやハードコアもまじえつつ、基本はフュージョンでしょうか。音楽理論には疎いので滅多なことは言えませんが、素人耳にもリズムパターンは豊富です。
編曲に関しては、ちょっと音が弱いか。レベルやフィルターの調整は十全とは言えないが、わざとチープさを残してるんだろう。『ぱんださんようちえん』だし。余計な音は入っていないし、パートを素直に聴けるのでこれはこれで心地よい。展開も魅せる。

*Tr05「嘘ツキ鏡」
まず歌詞が鮮明。自然と世界に引き込まれる。
「物置でみつけた ほこりまみれの鏡 いつからあったのだろう きれいな形をしてる」
これが冒頭。
「物置」で場(環境)を設定、「みつけた」――わたしが、だ。では何を?――「ほこりまみれの鏡」――イメージしやすい。ここで場が鏡の付帯情報へ転化。「いつからあったのだろう」、内言語記述。焦点はわたしに引き戻される。「きれいな形をしてる」、内言語記述だが、鏡を叙述。視線が決定される。
とまあくどくど書いたけど、聴覚・言語は継起的にしか情報を伝達できないので、リスナーに正しくイメージを喚起させたいならば、記述の順序は最重要となってくる。そのための推敲がなされたリリックであることを記しておく。歌詞はほぼ全曲「TOx2RO」氏による。頭がいいのか悪いのか・・・・・・

歌詞そのものも大変結構なのだが、この曲の特徴は、同じ歌詞を交互に「普通に歌うパート」と「少し早口で単調に喋るパート」で歌う構成。台詞パートは単に物語性を強めるだけでなく、次に何が歌われる・語られるかを予期させ、期待させるし、またそれが裏切られたとき新たな歌詞は対比的に印象づけられる。面白い構造だ。なのだが、これはオリジナルではない。というか歌・台詞の往復運動だけでなく高音域のリフもピアノも、もろパクリである。OVA『エイリアン9』のED曲「rebirth」(2001)がそれ。時期も近いし、両方聴いた人なら誰でも気づくだろう。もしかしたら作った本人もどこかでバラしてるかもしれない。
「rebirth」も印象的な曲で、歌・台詞の往復+歌詞・曲調もダウナー。構成もおかしい。スルメのように何度となく聴いたものだが、どこか消化不良。その点「嘘ツキ鏡 」は少女の内面の物語へ、わかりやすく彫像されているのでもうパクリとかじゃなくてオマージュ万歳だろうよ。だってこの曲いいんだもん。

*Tr14「blue plastic resistance」
シャカシャカいってるハイハットは16分音符連打、2・4拍目にスネアを重ねるバックビートスタイル。もろ16ビートのフュージョンです。
途中8ビートにすげかわったり、リズムパートを細かく変化させたりとよくできていて、あっという間の4分30秒。ラストでTr2の“えんそくえんそくどうぶつえん”のフレーズと微かにかぶらせる技も憎い。

素養がないのでこれくらいしか書けない。にしてもインストの良さを論理的に説明するのって難しくありませんか? そもそも各々の音を示す名詞がはっきりしないし。
ぱんださんようちえんほんといいアルバムですよ。作曲者の堅実な音楽的バックボーンが伝わってきます。