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桜庭一樹『青年のための読書クラブ』【その一】

青年のための読書クラブ
 桜庭の新刊がいつの間にやら出ていた。
 『青年のための読書クラブ』。贔屓目だが傑作。
 桜庭は完全に脱皮した。推定少女や砂糖菓子が一度目の脱皮であった。今回は二度目だ。
 二度目の脱皮を遂げられる作家は一握りだ。桜庭はやり遂げた。万歳、万歳、万歳。
 文章に滑稽味を出すのは、とても難しい。滑稽とは上品な笑いである。笑いは難しい。滑稽はもっと難しい。『青読』はそれができている。
 詳しいことその他諸々は日を改めて書く。


 今日は初めて日記を書こうと思う。
 昨日夕方、本屋に寄ると『青年のための読書クラブ』があった。
 桜庭を偏愛している私は、当然見つけた瞬間手に取り、いそいそとレジへ向かった。
 所用を片付け、終電で貪るように一章を読み終え、あまりの面白さに感涙を浮かべつつ、祝杯のためにコンビニでリキュールを買い、我が家へ帰り、また貪るように読み、読み終えた。夜は明けかけていた。
 興奮冷めやらぬままwikipediaで「桜庭一樹」を検索した(これは習慣なのだが、素晴らしい作品に出会ったあとは、作り手のあらましをその都度確認するのだ)。
 するとなんということだろう、本日7月26日が桜庭一樹の誕生日であった。呆然としつつも、やはりこれは運命だ。ファム・ファタールだ。

 桜庭との出逢いもまた運命であった。なにか新しい本が読みたくて、とらのあなでラノベの新刊を見ていると『推定少女』が目にとまった。「推定少女」である。甘くて苦い、抗えない語感だ。どこかが壊れてしまったような繊細なタッチのジャケは、かねてよりファンである高野音彦だ。

「俺は絶対にこの小説を好きになる」

 いそいそとレジへ向かった。読み始めれば手が止まらなかった。「ここにいたのか! 俺はお前を知っていたぞ!」そう呼びかけながら読んだ。
 次作、出世作でもある『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』も同じだった。「やはりここにいたのか!!」
 二度続けばもう虜になるしかない。既刊は殆ど集めた。知る限りの本屋・古本屋を巡り、巡り続けた。期待と失望と欣喜雀躍「サ行」巡りである。

 あれから3年近くが経とうとしている。
 一度は御尊顔を拝さねばと、桜庭がゲストだったSFセミナーのためにわざわざ東京に行った。友人の頼みで表紙を描いた某SF研の冊子がさるイベントで桜庭本人に直接進呈されたと聞いたときは「俺の描いた絵を桜庭が見た! もう死んでもいい。つか本当に死ぬんじゃないか」と悶えた。
 そこそこ売れているようだし、タカハシマコ『乙女ケーキ』の帯推薦文を桜庭が書いていたり、どうやら時代は私の感性をキャッチしてくれている。
 何より『青年のための読書クラブ』で見せた脱皮は、これからの10年20年を生き抜いていくものだ。こんなに嬉しいことはない。
"Happy Birthday & Glory to you!"